金髪の人
海の町に金髪が似合う。
海といってもリゾートのようなビーチではなく、茨城の、大洗の海がよく似合っていた。
家に現れたその人はヤンキーがおっちゃんになったらこうなるんだろうなって感じ。
けど飄々とした大人な雰囲気をまとっていて、ただのヤンキーではないなと思った。
聞けばカメラマンとのこと。
僕のカメラマン像から遠くかけな離れたその人は、ごっついカメラをぶら下げて花を撮っていた。
持ってきたレンズは接写用のレンズだけらしくて、撮影対象にかなり接近してパシャパシャといろんな物を撮っていた。
(おっちゃんやその人じゃ書きづらいのでタカタさんと呼ぶ)
タカタさんの通り道
タカタさんからカメラ技法をひとつ教わりました。
それは手前と真ん中と奥を意識して撮るということ。
撮りたい物にピントを合わせ、手前に何か物をおいて、そして奥行きを感じるように遠くも映るようにする。
タカタさんはその奥行きを作るためにドアや窓を開けるんです。
なのでタカタさんが通ったところはすべて全開だったり、半開きだったり、どこを通ったのかよくわかった(笑)
月が傾いてゆくのも忘れて
タカタさんとはたくさん話をしました。
なぜ家守をやっているのか、町の何が好きなのか、どういう町に住んでいたのか、なぜ仕事をやめたか、なぜカメラを始めたのか、今までどんな経験をしてきたのか、空や海が広い町に住むということ、海に足をつけること、アートと素直な心、死に方について考えること、反省することの9割は不要ということ、こうでなきゃいけないなんてないということ、人間らしさってなんだろうということ。
とてもここには書ききれない。
それこそ、くだらない話もたくさんした。
庭の草むしりを一緒に手伝ってくれたときには、猫じゃらしのこんもりした山を抜こうとしたら「それも抜いちゃう?」ってちょっと残念そう。
「このまま置いときましょうか」と言うと嬉しそう(笑)
猫じゃらしをそのままに周りの草を引き抜いていく。
いつの間にか、猫じゃらしの山だけがすんごい強調されて、僕らはそれを大森林と名付けた。
途端に神々しさが出てきたような気がして、2人して「なんか今宿ったよね」っつって、「この猫じゃらしを抜くとバチが当たる」なんて、いい大人が阿呆な会話を繰り広げた。
夜にはお酒を持って家の外で腰掛けて、月が傾いてゆくままにずーっと話し込んだ。
教わったのは、いくつになっても色気を忘れてはいかんということ。
最近の悩みはどんな人からも親戚のおじさん的な位置に収まってしまうことらしい。
ましてお土産で東京ばなななぞ買ってきた日には、親戚のおじさんまっしぐらだから気をつけにゃならんということ。
そんな会話の翌日には、頭にタオルを巻いて朝から草をむしるタカタさんの姿があった。
歩んできた道は違うけれど
タカタさんと僕は歩んできた道は違うけど、とても共感した。
何か根底にある考え方が似ているのかもしれない。
タカタさんが仕事を辞めてカメラマンになるという決断を下した話も、僕の心境と似たものがあった。
30とか40の年齢はやっぱり節目だから、その歳になる前に行動をしたくなる、というよりも、いましなきゃ一生後悔するという焦りに似た気持ちがあって。
その気持ちがすごくよくわかった。
けど、バリバリキャリアを積み上げて、実績を残してたタカタさんのような人が、40手前にしていきなりカメラマンになるなんてすごいと思ったし、周りの反応も想像できた(笑)
応援の前に「この先どうすんの」とか「無茶でしょ」みたいな言葉はたくさん受けたって。
それでも自分のやりたいことをするために行動することが人生を作っていくんだと思う。
タカタさんも僕も今この時においても、人生をどう生きるかを考え続けて、人生を作っているんだな。
いくつになってもそんな男でありたいと思う、タカタさんは僕の目指すところにあると思いました。
色気は失わないように気をつけます(頭にタオルは巻かない)。
次にやりたいことが浮かんできたと言った
タカタさんは話しているうちに次にやりたいことが見えてきたかもしれないと言った。
海の近い町に移住したいと言うことや、カメが産卵に来る町で写真を撮りたいとか、銭湯を経営したいとか。
そんなふうに聞くと取り止めもなく聞こえるけれども、それは繋がっていて、今の延長線上にあって。ぼくは純粋にいいなと思った。
きっとしばらくしたらまた新しい何かことを始めてるんだと思う。
そこに大きい小さいなんて関係なくて、どこまでも延長線上。
タカタさんが新しい町に住んだ時にはそこをぼくの第2の家にする計画もあるので、決まったら住所を教えて欲しい。
広い人
タカタさんはぼくのことを広いと表現してくれた。
誰でも受け入れる広さがあると。嬉しい限りです。
いろんな人の考えや生き方を聞くのが好きだし、ぼく自身の考えを聞いてもらうのも好き。
ぼくは「それもいいね、あれもいいね」みたいな、ともすれば優柔不断な感じで、なんでもいいねっつってる無責任な人に思われかねないですが、それを広いと表現するタカタさん。
ぼくはあなたこそ広い人だと思った。
いいねと言ってくれた広さを生かして、ぼくなりの道を進もうと思う。
では、また遊びに来てください。
いってらっしゃい。
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